溶接資格完全ガイド|JIS・WESの種類と取得ロードマップ

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ジョブスコア編集部|

「溶接の資格を取りたいが、種類が多すぎて何から手をつければいいかわからない」——そう感じている方は少なくありません。アーク溶接特別教育、ガス溶接技能講習、JIS溶接技能者、ボイラー溶接士、溶接管理技術者……名称を並べただけでも混乱します。

整理のポイントはひとつです。溶接の資格は「作業をするために法的に必要なもの」と「技能の高さを証明するもの」の2系統に分かれています。この区別がつけば、全体像は一気にクリアになります。

そしてもうひとつ、意外と知られていないのがスタートのハードルの低さです。アーク溶接の特別教育は18歳以上なら誰でも受講でき、試験もありません。JIS溶接技能者の基本級も、溶接技術を習得してから1か月以上あれば受験できます。溶接は、資格取得のスタートを切るのが極めて早い職種なのです。

本記事では、溶接資格の全体像を2系統に整理し、JIS溶接技能者の等級区分、資格の維持に必要な手続き、上位資格、そして状況別の取得ロードマップまでを解説します。

18歳以上
アーク溶接特別教育
(試験なし・講習のみ)
1か月
JIS基本級の受験に必要な
技能習得期間
約80%
JIS溶接技能者
基本級の合格率の目安

溶接の資格は「2系統」に分かれる

まず、この図を頭に入れてください。溶接の資格はすべて、次の2つのどちらかに分類されます。

図:溶接資格の2系統
① 必須系(法的要件) これがないと作業できない ・アーク溶接等の特別教育 ・ガス溶接技能講習 ・ガス溶接作業主任者 ・ボイラー溶接士(対象作業) 労働安全衛生法などに基づく 取得のハードルは低い (講習受講で取得できるものが中心) ② 技能証明系 技能の高さを客観的に示す ・JIS溶接技能者(基本級/専門級) ・アルミニウム溶接技能者 ・溶接管理技術者(WES 8103等) ・溶接作業指導者 実技試験による評価が中心 年収・仕事の幅に直結する (有効期限があり維持が必要)
①は「働くための入場券」、②は「腕前の証明書」。役割がまったく違います。
比較項目 ① 必須系 ② 技能証明系
位置づけ 作業を行うための法的要件 技能レベルの客観的証明
取得方法 講習の受講・修了が中心 学科+実技試験
難易度 低い(受講すれば取得できるものが多い) 実技の練習が必要
有効期限 基本的になし あり(定期的な更新が必要)
年収への影響 限定的 大きい(資格手当の対象)

【必須系】これがないと作業できない資格

必須 1 アーク溶接等の業務に係る特別教育
対象作業アーク溶接(被覆アーク、半自動、TIGなど)の業務全般
受講資格18歳以上(実務経験・学歴は不問)
内容学科教育+実技教育
試験なし(講習を受講・修了すれば取得)
有効期限なし

アーク溶接を業務として行うには、労働安全衛生法に基づくこの特別教育の修了が必要です。アーク溶接は強い光と高温を扱うため、安全のための教育が法的に義務づけられています。

重要なのは、試験がなく、受講すれば取得できるということです。18歳以上であれば、実務経験も学歴も問われません。未経験の方が入社前に自主的に取得することも可能です。

必須 2 ガス溶接技能講習
対象作業酸素・可燃性ガスを用いたガス溶接・溶断作業
受講資格18歳以上
内容学科+実技の技能講習
有効期限なし

ガス溶接・溶断を行う場合に必要な資格です。こちらも技能講習を修了することで取得できます。アーク溶接特別教育とあわせて取得しておくと、対応できる作業の幅が広がります。

必須 3 ガス溶接作業主任者
位置づけ国家資格(作業主任者)
役割複数の作業者が従事するガス溶接作業の安全管理
要件国家試験の合格+一定の実務経験

一定規模以上のガス溶接作業を行う事業場では、作業主任者の選任が義務づけられています。現場をまとめる立場を目指す段階で取得を検討する資格です。

未経験者は「特別教育」から入るのが最短
アーク溶接等の特別教育は18歳以上なら誰でも受講でき、試験もありません。つまり、溶接の経験がまったくない方でも、入社前に取得しておくことができます。応募時に修了証を持っていれば、「本気で溶接の道に進みたい」という意思表示になりますし、入社後すぐに実作業に入れるため、企業側にとってもメリットがあります。

【技能証明系】JIS溶接技能者の全体像

年収と仕事の幅に直結するのが、こちらの系統です。その中心がJIS溶接技能者です。

これは、日本産業規格(JIS)や日本溶接協会規格(WES)といった国内規格に基づき、溶接作業の技量を評価試験で確認し、資格として認証する制度です。一般社団法人日本溶接協会が実施しており、発注者の要求水準を満たす溶接ができることの客観的な証明になります。

資格の種類

資格の種類 対象 準拠規格
手溶接技能者 被覆アーク溶接、TIG溶接、ガス溶接(炭素鋼) JIS Z 3801/WES 8201
半自動溶接技能者 マグ溶接、セルフシールド溶接など(炭素鋼) JIS Z 3841/WES 8241
ステンレス鋼溶接技能者 ステンレス鋼の溶接 JIS Z 3821/WES 8221
チタン溶接技能者 チタン・チタン合金の溶接 JIS Z 3805/WES 8205
プラスチック溶接技能者 プラスチックの溶接
銀ろう付技能者 銀ろう付作業
すみ肉溶接技能者 すみ肉溶接
石油工業関係溶接士 石油工業関係の溶接 JPI規格
基礎杭溶接技能者 基礎杭の溶接
アルミニウムは別の協会が認証している
アルミニウム合金の溶接技能者資格は、一般社団法人軽金属溶接協会が認証しています。受験資格の考え方はJISと同様で、基本級は1か月以上アルミニウムの溶接技能を習得した満15歳以上、専門級は3か月以上の技能習得と対応する基本級の保有が条件です。アルミ溶接は自動車、鉄道車両、船舶などで需要があり、対応できる技能者が限られる分野です。

基本級と専門級の違い

JIS溶接技能者資格には、それぞれ基本級専門級という区分があります。

基本級
下向きの溶接が対象

・受験資格:1か月以上溶接技術を習得した15歳以上
・合格率の目安:約80%
・比較的取り組みやすい
・溶接技能者としての第一歩
専門級
下向き以外の姿勢が対象

・受験資格:3か月以上の技能習得+対応する基本級の保有
・立向き、横向き、上向きなど
・厚板、非鉄金属にも対応
資格手当・処遇に大きく影響

基本級と専門級は同時受験できる

知っておくべき重要なポイントがあります。専門級の受験には対応する基本級の保有が必要ですが、基本級に合格することを前提として、基本級と専門級を同時に受験することが可能です。

つまり、十分な技能があれば一度の受験機会で基本級と専門級の両方を取得できるということです。受験の回数を減らせるため、費用と時間の節約になります。

専門級が対応する範囲

専門級は、基本級の範囲を超える母材・板厚・姿勢の組み合わせに対応します。

  • 姿勢:立向き、横向き、上向きなど(全姿勢対応の証明になる)
  • 板厚:厚板への対応
  • 材質:ステンレス鋼、アルミニウム合金、チタンなどの非鉄金属

前回の記事で解説したとおり、溶接工の年収は「溶接法 × 材質 × 姿勢」の掛け算で決まります。専門級の取得は、この3軸すべてを広げる行為です。

資格の維持|見落とされがちな有効期限

ここが、溶接資格の最大の注意点です。

JIS溶接技能者の資格には有効期限があります。一度取得すれば一生使えるものではありません。資格を維持するには、定期的な手続きと再評価試験が必要です。

維持に必要な2つの手続き

手続き 内容
サーベイランス(継続確認) 資格に対応する溶接業務に継続して従事していることを、定期的に申請・確認する手続き
再評価試験 有効期間の満了時に、あらためて実技試験を受けて技量を確認する

更新の周期は資格の種類や等級によって異なる場合があるため、取得した資格については、認証機関の最新情報を必ず確認してください

失効すると、仕事から外される可能性がある
有効期限を見落として資格が失効すると、再度、新規で受験し直すことになります。試験対策の時間も受験料も、もう一度必要です。さらに深刻なのは仕事への影響です。公共工事や品質基準の厳しい案件では「有効な資格を保有する技能者」であることが施工の条件とされることがあり、失効によって担当を外される事態も起こり得ます。手続きの管理は、技能そのものと同じくらい重要です。
「更新費用を会社が負担するか」は、転職時の必須確認項目
複数の資格を保有していると、サーベイランスと再評価試験の費用・手間は無視できない負担になります。この費用を会社が負担してくれるかどうかで、実質的な手取りは変わります。求人票では「資格取得支援あり」と書かれていても、それが新規取得のみを指すのか、維持・更新まで含むのかは別問題です。面接で具体的に確認しましょう。

上位資格・管理系の資格

技能者としての資格を積み上げた先には、さらに上位の資格があります。

上位 1 ボイラー溶接士(普通・特別)
位置づけ国家資格
対象作業ボイラーおよび第一種圧力容器の溶接
受験要件普通:1年以上の実務経験/特別:普通資格取得後1年以上の実務経験

ボイラーや圧力容器の溶接には、この資格を持つ者でなければ従事できない作業があります。プラント、エネルギー、化学工業などの分野で価値が高い資格です。普通から特別へと段階的に進む構造になっています。

上位 2 溶接管理技術者(WES 8103等)
位置づけ管理・技術系の資格
対象業務溶接施工計画の立案、品質管理、溶接部の評価
受験要件学歴・実務経験に応じた受験区分あり
試験筆記試験+口述試験

手を動かす技能者ではなく、溶接の施工全体を計画・管理する立場の資格です。品質保証、生産技術、製造管理といった役割に進む際の基盤になります。身体的な負担が増す年代でもキャリアを継続できる道として、多くの技能者が目指す資格です。

上位 3 溶接作業指導者
位置づけ指導系の資格
対象業務現場での溶接指導、新人教育
受験要件25歳以上、溶接技能者資格の保持+一定の実務経験
試験講習+筆記試験

後進を育てる立場になるための資格です。溶接技能者の高齢化が進むなか、技能を次の世代に伝えられる人材の価値は年々高まっています。班長・職長といったポジションと組み合わせることで、処遇の向上につながります。

上位 4 溶接ロボット運転技能者
位置づけ技能証明
対象業務溶接ロボットの操作・ティーチング
意義自動化が進む現場での需要が拡大

製造現場の自動化が進むなか、需要が高まっている分野です。溶接を理解している人でなければ、適切なティーチング(動作の教示)はできません。手溶接の技能とロボット操作の両方ができる人材は、今後ますます希少になります。

状況別・取得ロードマップ

CASE 1
未経験からこれから溶接を始める場合

まずアーク溶接等の特別教育を受講してください。18歳以上なら誰でも受けられ、試験もありません。入社前に取得しておけば、意欲の証明になり、入社後すぐに実作業に入れます。あわせてガス溶接技能講習も取得しておくと、対応できる作業が広がります。

入社後は実務で技能を積み、1か月以上の技能習得を経てJIS溶接技能者の基本級に挑戦します。溶接は、資格取得のスタートが早く切れる職種です。

CASE 2
実務経験はあるが資格を持っていない場合

すでに溶接業務に従事しているなら、JIS溶接技能者の基本級と専門級の同時受験を検討してください。基本級の受験には1か月以上、専門級には3か月以上の技能習得が条件ですが、実務経験があれば要件は満たしているはずです。

一度の受験機会で両方を取得できれば、費用と時間を大きく節約できます。基本級の合格率は約80%と、しっかり準備すれば十分に手が届く水準です。

CASE 3
基本級を持っていて、次を目指す場合

進む方向は2つあります。

横に広げる:専門級(姿勢・厚板)、ステンレス鋼溶接、アルミニウム溶接、チタン溶接など、対応できる材質と姿勢を増やす。これが最も直接的に単価を上げるルートです。

上に進む:ボイラー溶接士で圧力容器の分野に進む、あるいは溶接管理技術者・溶接作業指導者で管理・指導の側に回る。

CASE 4
40代以降、身体負担を考えてキャリアを考える場合

溶接管理技術者と溶接作業指導者が有力な選択肢です。現場で手を動かす比重を下げながら、これまで培った技能と知識を活かせます。施工計画、品質管理、後進の育成——溶接を深く理解している人にしかできない役割です。

また、溶接ロボット運転技能者も検討に値します。自動化が進む現場で、溶接の勘所を理解した人材は不可欠だからです。

資格取得を支援してくれる会社の見極め方

資格取得は、個人の努力だけで決まるものではありません。会社の環境が、取得スピードと継続性を大きく左右します

確認すべき7項目

項目 確認内容
受験費用の負担 受験料・講習費・材料費を会社が負担するか
更新費用の負担 サーベイランス・再評価試験の費用も含まれるか
練習環境 試験前に練習できる設備・材料・時間があるか
指導体制 試験対策を教えてくれる先輩・指導者がいるか
合格報奨金 合格時に一時金が支給されるか
資格手当の設計 どの資格にいくらつくか。複数保有で積み上がるか
実務経験を積める仕事 多様な材質・姿勢の仕事に関われるか

特に見落とされがちなのが、最後の項目です。資格を取っても、それを使う仕事がなければ技能は伸びません。軟鋼の下向き溶接ばかりの職場では、専門級やステンレス・チタンの資格を活かす機会がありません。

「資格を取らせる会社」は、教育に投資できる会社
受験費用の負担、練習用の材料と時間の確保、指導者の配置、合格報奨金——これらはすべてコストです。短期的な利益を生まない投資を続けられるのは、財務基盤が安定している会社に限られます。逆に言えば、資格取得支援が手厚い会社は、それだけ経営に余裕があるということでもあります。JOBSCOREでは「教育制度や福利厚生などの充実感」を評価項目のひとつとし、人材教育計画の有無を含めてスコアリングしています。

まとめ

溶接の資格は、作業を行うために法的に必要な「必須系」と、技能の高さを示す「技能証明系」の2系統に分かれます。この区別ができれば、全体像は明確になります。必須系のアーク溶接特別教育は18歳以上なら誰でも受講でき、試験もありません。溶接は、資格取得のスタートを切るのが極めて早い職種です。

年収と仕事の幅に直結するのは技能証明系、なかでもJIS溶接技能者です。基本級(下向き)と専門級(下向き以外の姿勢・厚板・非鉄金属)に分かれ、専門級の取得が処遇を大きく変えます。基本級の合格率は約80%で、基本級と専門級は同時受験が可能です。

ただし、これらの資格には有効期限があり、サーベイランスと再評価試験による維持が必要です。失効すれば再受験になり、案件によっては仕事から外される可能性もあります。転職時には「取得費用」だけでなく「更新費用を会社が負担するか」、そして「取った資格を活かせる仕事があるか」まで確認してください。資格取得のスピードは、会社選びと切り離せません。

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出典・参考
  • 一般社団法人日本溶接協会「溶接技能者資格」
  • 一般社団法人日本溶接協会「JIS・WESに基づく溶接技能者資格の取得と維持」
  • 一般社団法人軽金属溶接協会「アルミニウム溶接技能者評価試験・資格認証」
  • 厚生労働省「労働安全衛生法に基づく特別教育・技能講習」
  • 厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)「溶接工」

ジョブスコア編集部

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